がん免疫治療とは
呼吸器内科部長 麻生 裕紀
がん細胞は正常な細胞の遺伝子が変化してできた異常な細胞で、体の中で増えていこうとします。通常は、免疫によってがん細胞は「自分ではない」異物とみなされ、体から取り除かれます。しかしながら、がん細胞は性質を少しずつ変化させて免疫による攻撃から逃れるシステムを構築することにより増えることが可能となり「がん」が発生します。
がん免疫治療とは、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療です。近年は、がん細胞が免疫に対しブレーキをかけるCTLA-4やPD-1などの働きが明らかになり、がんの免疫のブレーキを解除する治療が注目されるようになりました。それが免疫チェックポイント阻害剤であり、保険診療で治療を行うことができるこれらの薬剤の登場により治療が大きく変わることになりました。
通常の保険診療で肺がんの治療を受けることができる免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ(オプジーボ)、ペンブロリズマブ(キートルーダ)、アテゾリズマブ(テセントリック)、デュルバルマブ(イミフィンジ)、イピリムマブ(ヤーボイ)になり、肺がんの種類・時期・患者さんの状態によってこれらの薬剤を使い分けています。今後もさらなる薬剤の適応が期待されています。
免疫チェックポイント阻害薬が使用することができるようになり、抗がん治療において多大なる効果が期待できるようになった反面、副作用には十分に注意をする必要があり、早期の発見・診断・治療ができるような環境が整っていることが重要です。肺がん以外でも多くのがんに対しての免疫チェックポイント阻害薬の効果が示されるようになり、今後さらに多くの患者さんに免疫チェックポイント阻害薬の使用されることが予想されます。一宮市立市民病院では、多くの診療科が協力して免疫チェックポイント阻害薬の副作用が起こったときの体制を充実させており、すぐに対応できるようにサポートしています。
当院は、地域がん連携拠点病院に指定されており、専門的ながん医療の提供を行っています。外科的治療・薬物治療・放射線治療・緩和ケア治療など、がんの患者さんが最適な集学的治療を行えるように、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・臨床心理士などの多職種にわたった連携によるチーム医療を行っており、患者さんに合わせた最適ないわゆる“オーダーメード治療”を提供しています。その治療の中には免疫チェックポイント阻害薬が含まれ、適応のある患者さんには積極的に提供しています。治療のご希望がありましたら、ご気軽にご相談ください。