アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法
副院長(耳鼻いんこう科) 森部 一穂
鼻アレルギーには大きく分けて2種類あります
- 季節性アレルギー・・・限定した季節に起こるアレルギー性鼻炎(原因:ほとんどが花粉です)
- 通年性アレルギー・・・年間を通じて起こるアレルギー性鼻炎(原因:ダニ・ハウスダストが代表的)
免疫療法とは、アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らし、長期にわたって症状をおさえたり、症状をやわらげたりできます。一般的なアレルギーの薬による治療は対症療法と言って、症状を抑える治療です。それに対して免疫療法は根治療法となるので、舌下免疫療法を5年続けた患者さんは、治療をやめても5年間は症状が出ないと言われています。
方法
検査でダニ、あるいはスギアレルギーと診断された患者さんが治療を受けることができます。年齢制限はありませんが、現実的には5歳以上と考えています。
初回投与は病院で行います。舌の下にダニ、あるいはスギエキスのシート(錠剤の薄いもの)を置くとすぐに溶けますが、飲み込まずに1分程度じっとしています。その後は飲み込んでも吐き出しても構いません。副作用は30分以内に出ることが多いので、30分は病院で経過を観察します。1週間は少量の投与ですが、2週間目からは維持量といって量が増えます。したがって、最初に投与して1週間後に受診をし、副作用がないことを確認してから維持量の投与となります。その後は1ヶ月に一度の受診で投薬を続けます。
副作用について
舌下免疫療法の副作用は、30分以内に起こる口の中の腫れやのどのかゆみがあります。気管支喘息で治療中の患者さんは喘息発作を誘発することも報告されているので、そのような方は治療前に相談をしてください。重篤なものとしては、ごく稀にアナフィラキシーショックが起こります。前兆として血圧が低下して脈が早くなったり、吐き気やおう吐が出たり、意識がボーッとする、呼吸がヒューヒューいうといった症状があれば、救急車を呼んで迅速に対応する必要があります。現在までそれほど重篤な症例は報告されていません。
少なくとも2-3年以上かかる治療で、毎日の服用が必要です。根気よく続けるようにしてください。
効果発現の時期
1年以上治療を継続しないと効果が出ないといわれていますが、効果が出たからといって中断すると、元に戻ります。最低でも2-3年は治療を継続してください。
治療を希望される患者さんへ
一宮市立市民病院での舌下免疫治療の流れは以下の通りです。
- 近医からの紹介状を持参し、耳鼻科を受診してください。紹介の際に適性検査が済んでいれば、受診したその日から舌下免疫療法を開始することができます(適性検査は血液検査等で行います。近医でそれを済ませてから紹介状を書いてもらった方が良いでしょう)。
- 投与する日は最初に30分程度の説明会をします。その後、治療を開始します。最初は外来で舌下投与を行い、30分間副作用が出ないか確認をします。それ以降は自宅での舌下治療を継続してもらいます。
※治療を受けられない患者さん
- 病因アレルゲンがダニあるいはスギ花粉ではない患者さん
- 本剤の投与によりショックを起こしたことのある患者さん
- 重症の気管支喘息患者
- 悪性腫瘍、または免疫系に影響を及ぼす全身性の疾患のある患者さん
- 本剤の投与、またはアレルゲンエキスによる診断・治療、あるいはスギ花粉を含む食品の摂取等によりアレルギー症状を発現したことのある患者さんなど