アトピー性皮膚炎
診療局長兼皮膚科部長 満間 照之
アトピー性皮膚炎は皮膚において天然保湿因子がうまく作れないこと、アレルギー炎症、掻痒の三位一体となって生じ寛解増悪を繰り返す疾患であるとされており、慢性に症状が続き掻痒による寝不足などから患者さんの苦痛が強い疾患です。
また幼児期のアトピー性皮膚炎は食物アレルギー、喘息やアレルギー性鼻炎の発症にも関与しており注意が必要です。
. Bantz, S. K. et al.: J Clin Cell Immunol., 5(2), 202(2014); 2. Ba n, R. et al.: BMJ., 324(7350rnetso), 1376(2002);
診断
慢性の特徴ある部位に生じる湿疹がアトピー性皮膚炎の定義です。脂漏性皮膚炎、慢性接触皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹などを鑑別する疾患として挙がりますが時として皮膚悪性リンパ腫なども似た症状を呈するので皮膚科専門医による診断が必要です。
治療
皮膚科学会、アレルギー学会などが共同で作成したガイドラインがあり皮膚科や小児科などで広く用いられています。一宮市立市民病院においてもガイドラインを参考に治療を行っています。
バリア機能低下を補うための保湿や食物の経皮感作(皮膚を通してアレルギーを獲得すること)を防ぐための顔面を主体とする皮膚炎の治療がアレルギーマーチを防ぐために有用です。
最近では外用薬としてステロイド以外にタクロリムス、JAK阻害薬、PDE4阻害薬など違った機序の薬剤も登場しており、塗り方の工夫をすることで副作用を最小限におさえることも可能です。また中等症、重症の患者さんに対しては分子標的薬が登場し、掻痒(かゆみ)を抑えることから皮膚性状の改善などもかなり期待できるようになりました。分子標的薬としてはJAK阻害薬、IL4/13抗体製剤、IL31抗体製剤、IL13抗体製剤などがあります。内服薬から注射薬まで剤形はいろいろですが、当院ではすべての薬剤を使用して治療に当たっています。