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ドクターインタビュー

顔面神経麻痺とヘルペスウイルス

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副院長(耳鼻いんこう科) 森部 一穂

顔面神経麻痺がヘルペスウイルス感染によって起こることをご存知でしょうか?一宮市立市民病院森部一穂医師にその詳細について話を聞きました。

Q1. 顔面神経麻痺とはどのような病気ですか?

顔面神経麻痺はどなたも聞いたことのある病気だと思います。以前であれば、脳神経外科、脳神経内科、耳鼻いんこう科のいずれかを受診されていました。ところが最近では耳鼻いんこう科が専門科としてその疾患を扱うことが多くなっています。その理由として、顔面神経麻痺の大半はヘルペスウイルスで起こるということが発見されたからです。しかもその発見は名古屋市立大学耳鼻いんこう科の前教授、村上信五先生によってなされています。具体的には顔面神経麻痺は、ヘルペスウイルスが耳の後ろにある側頭骨という骨の中で顔面神経に感染することで発症します。

Q2. なぜ耳鼻いんこう科が診療に当たることが多いのですか?

それは治療の選択肢にあります。ヘルペスウイルスによって発症することが分かっただけでなく、顔面神経の神経伝達速度という検査によって、予後診断ができるようになったからです。予後診断とは、治りやすい人と治りにくい人が分かるということです。治りにくいとされている予後不良群の症例では回復率がそれまでは20%前後であったのが、早期の顔面神経減圧手術をすることで回復率は50%程度に改善しています。そしてその顔面神経減圧手術を専門とするのが耳鼻いんこう科なのです。

Q3. 検査について教えてください。

現在、顔面神経麻痺で受診する場合、最初に麻痺の程度を調べます。麻痺の程度は顔のどの部分がどの程度動くかという検査です。例えば目を閉じることはできるか、鼻を動かすことはできるか、口が左右均等に動くかなどの運動を観察します。その運動性を点数化して、重症・中等症・軽症に分類します。血液検査ではヘルペスウイルスの検査・帯状疱疹ウイルスの検査(重症例では帯状疱疹ウイルスが多いと言われています)・糖尿病の検査をします。

Q4. どのような治療法があるのでしょうか?

抗ヘルペス薬、ステロイドホルモン薬を内服します。ステロイドホルモン薬を使用すると血糖が上がるため、糖尿病のある人は入院を必要とします。糖尿病がなければ、一般的には外来通院で治療が可能です。

また、発症後10日から14日ごろに神経伝達速度を検査します。左右の顔面神経に電流を流して、どの程度流れるかを計測します。麻痺のある側に正常よりもはるかに悪い検査値が出た場合は、顔面神経減圧手術をできるだけ早く行います。耳の後ろの骨を削って骨の中に埋もれている顔面神経を骨の囲いから解放してあげる手術です。手術時間は2時間程度、入院は1週間くらいです。手術のリスクとしては、耳の鼓膜の裏側を操作するので、少し聞こえが悪くなることがあります。ごくまれに、術後にめまいが生じることもあります。この手術を行うことで、経過が良好であれば、半年くらいで回復してくることが多いとされています。

もし皆さんの周りに顔面神経麻痺と診断された、顔が動かなくなってしまった、ゆがんでしまったという人がいたら、それは耳鼻いんこう科が専門だよと教えてあげてください。

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