その息切れは年のせいではありません
呼吸器内科部長 麻生 裕紀
息切れはさまざまな病気の症状として現れますが、「年をとったから」と見過ごされがちです。麻生裕紀医師が呼吸器内科医の視点から質問にお答えします。
Q1. 息切れを感じた場合にはどのような病気が考えられますか?
息切れとは、呼吸をするのに努力が必要であり不快感を自覚することです。息切れには、努力しないと呼吸ができない、十分に息を吐けない、空気が足りないような感じがする、動くと苦しい、息がつまる、胸が広がらない、胸が圧迫される、呼吸が重い、呼吸が浅い、呼吸が早いなど様々な表現があります。息切れを呈する病気には肺、心臓、血液、精神的疾患など多くの種類がありますが、肺の病気ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)・気管支喘息・肺がん・間質性肺炎などがあります。
Q2. 息切れの診断にはどのような検査をしますか?
息切れの原因にはさまざまな病気があるので、まずは呼吸器内科を受診して下さい。症状、呼吸機能検査(肺活量など調べる検査)、胸部エックス線、胸部CT、心電図、血液検査、動脈血ガス分析(動脈中の酸素や二酸化炭素濃度などを測定する検査)、などを参考にして病気の診断をします。
Q3. どのような治療がありますか?
疾患によって異なります。COPDはタバコが原因の病気ですので、まずは禁煙が大切です。また、様々な吸入薬を使用できるようになり、症状を和らげたり、増悪を抑制したり、呼吸機能の低下のスピードを軽減することができます。一方、気管支喘息の治療は吸入ステロイドを使用できるようになってから飛躍的に進歩しています。それでも治りにくい場合には生物学的製剤の皮下注射を行います。
肺がんについては何といっても早期発見・早期治療が重要です。必ず、毎年の健診は受けるようにしてください。肺がんの治療は、手術・放射線治療・抗がん剤治療があり、抗がん剤治療は分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬を使用することにより飛躍的進歩を遂げています。一宮市立市民病院はがん拠点病院としての役割を担い、がんの遺伝子を検索し先進的な医療を行っています。
肺は肺胞という小さな袋がたくさん集まってできています。間質性肺炎は、この肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、壁が厚く硬くなるため(線維化)に酸素が取り込みにくくなる病気です。間質性肺炎の原因は様々ですが、原因不明なものも多く認められます。治療はステロイドや免疫抑制剤などが使用されますが、近年では抗線維化薬が使用できるようになり呼吸機能の悪化を抑制する効果を有します。
Q4. どのようなことを心掛けて診療にあたっていますか?
COPD・気管支喘息・肺がん・間質性肺炎など呼吸器の病気において医学の進歩によりさまざまな薬剤が使用できるようになりました。患者さんに長生きをしてもらうためにこれらの薬剤を使用します。その上に、健康でいられる時間をできるだけ長くする、生活の質(QOL)を保持することも重要です。そのために、当院では薬物治療だけではなく、理学療法士・栄養士・薬剤師・心理士など多職種の関わりにより呼吸リハビリテーション・栄養療法・緩和ケアなど多面的なアプローチを行っています。患者さんには、長生きすることだけではなく、元気な生活を送っていただくことを心掛けて診療を行っています。ご遠慮なくご相談ください。