目が見えにくいのは、下垂体腫瘍のせいかもしれません

脳卒中センター副センター長 秋 禎樹
脳にぶらさがるような構造をしている下垂体はホルモンを作る重要な器官です。この部分に腫瘍ができることによって視力が低下することがあります。この疾患の治療経験が豊富な秋禎樹医師に話を聞きました。
Q1. 眼の病気以外で視力が落ちることはあるのですか?
視力が落ちる原因は加齢・眼の疲れや白内障や緑内障といった眼の病気によるものがほとんどですが、まれに下垂体腫瘍が隠れていることがあります。
Q2. 下垂体腫瘍とは何ですか?
下垂体は体にとって重要ないくつかのホルモンを分泌する組織です。脳の直下にぶらさがるような構造をしており、エンドウ豆ほどの大きさです。下垂体の真上には、視神経(ものを見るための神経)が走っています。下垂体に腫瘍ができて徐々に大きくなることで視神経が圧迫され、「目の見えにくさ」が出てきます。また、腫瘍自体がホルモンを産生することもあり、それによる症状が出る場合もあります。
Q3. 特徴的な症状はどのようなものでしょうか?
腫瘍が視神経のある一定の部位を圧迫することが多いため、「両方の視野の外側が見えにくくなる」ことが特徴的です。また目の奥の痛みや頭痛が出現する場合もあります。このような症状がある方は、眼科だけではなく脳神経外科の受診をお勧めします。
Q4. どのような検査をすれば分かりますか?
頭のCTやMRIを撮ることで下垂体腫瘍があるかどうかを確認することができます。さらに、造影剤を用いたMRI検査を行うことで腫瘍の種類を特定します。
Q5. 下垂体腫瘍は治りますか?
下垂体腫瘍のほとんどは良性です。早期に治療することで、一度悪くなった視力も回復する場合があります。偶然見つかった下垂体腫瘍は、視力に異常がない場合には経過観察となることがほとんどです。また、腫瘍の種類によっては内服薬で小さくなることもあります。視力低下や視野異常などの症状が出ている場合には、原則として腫瘍を摘出する手術を行います。下垂体腫瘍の手術の多くは鼻の中から内視鏡を使って行いますので、体への負担は小さいといえます。思い当たる症状がある方はお気軽にご相談ください。