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ドクターインタビュー

動脈硬化は全身で同時多発する?

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心血管内治療部長(循環器内科) 石黒 久晶

超高齢化社会を迎え、全身の動脈硬化を原因とする疾患を抱える患者さんが増えています。その診療に詳しい石黒久晶医師に話を聞きました。

Q1. 動脈硬化の同時多発とは、どういうことでしょうか?

みなさんは全身性動脈硬化という言葉をご存知でしょうか。2007年ごろから話題になっている言葉ですので、それほど新しくはない概念ですが、高齢の患者さんを診察するときにはとても重要な言葉です。動脈硬化は全身で同時多発的に起きるので、それによって起こる病気は2つ以上重なって問題になることが多い、という意味です。例えば、狭心症や心筋梗塞の患者さんの1割は足の動脈がつまっていて、逆に足の動脈疾患がある方は、約半数が狭心症や心筋梗塞があると言われています。

Q2. 例えばどのような病気がありますか?

体のあらゆる臓器・組織は、その機能を維持するために、栄養と酸素が必要です。それを供給するのが、動脈です。動脈が細くなったり、つまったりして病気を引き起こすのが動脈硬化性疾患です。心臓を栄養する動脈である冠動脈が細くなると狭心症、脳の動脈が詰まると脳梗塞が起きます。下肢の動脈が細くなると慢性下肢閉塞性動脈硬化症が起きます。その他、腎臓の動脈や、腸の動脈が細くなる特殊な病気もあります。

Q3. 動脈硬化による病気の症状にはどのようなものがありますか?

狭心症の典型的な症状は、歩いたり、運動したりした時に起きる胸の痛みです。通常動くのをやめると症状は軽減します。足の動脈が細いことによって起こる、跛行(はこう)という症状は、歩いているうちに足が重だるくなるのですが、患者さんは歳のせい、とあきらめていることが多く、まさか動脈が原因とは思いません。下肢の動脈がつまってしまうと、足のちょっとした傷が治らなかったり、最悪の場合には足が壊死、すなわち腐ってしまって切断に至るケースもあります。その他、腎臓の動脈が細くなって起きる、特殊な高血圧や、腸を栄養する動脈が細くなって食事の時に腹痛が繰り返し起こるなど、あまり馴染みの無い病気もあります。つまり、動脈が細くなる部位によって、さまざまな症状が起きるわけです。

Q4. 全身に起きる病気であれば、どの専門科を受診すればよいか、迷いそうですね。

おっしゃる通りで、なかなか動脈のつまりが原因という診断がされずに、かなり病気が悪くなってから私たちの外来にたどり着くことがしばしばあります。自覚症状がほとんどないまま進行することがあるのが、血管の病気の怖さです。例えば、頸動脈が75%程度狭くなっても症状はありませんが、2年間放置すると4人にひとりが脳梗塞を発症します。心臓の栄養動脈である冠動脈は、狭窄が進行してもはっきりとした症状が出ない患者さんもいます。特に70歳以上の方や糖尿病の方、腎臓の機能が悪い方は、4割ぐらいが典型的な狭心症の症状がないままに進行していき、重症化すると言われています。これらの病気は、疑いさえすれば、比較的簡単な検査で見つけることができます。しかし、現代の病院の専門外来は臓器別に別れているため、患者さんがご自身の病気にあった科を選ぶことはなかなか難しいのが実情です。

Q5. では、動脈硬化が心配になったら何科を受診すべきか、誰に相談したら良いでしょうか?

循環器内科がどの程度全身の動脈や静脈の病気を網羅して治療ができるかは、実は病院によって大きく異なります。一宮市立市民病院循環器内科は、“循環器“、つまり全身の動脈や静脈に関わる病気を調べて、そのほとんど全てを治療することができます。もし皆さんが胸の症状が肺か心臓のどちらが原因なのか分からない場合や、足の症状が動脈によるものなのか、関節や筋肉など整形外科の病気によるものなのか分からないとしても、まずは一宮市立市民病院循環器内科を受診してもらえればと思います。動脈の病気は重症化しやすいので、血管疾患を優先して検査して、大丈夫そうであれば、適切な他の専門科に紹介することができます。ぜひお気軽に病気の相談にいらしてください。

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