心不全の治療(心臓リハビリテーション)
循環器内科医長 澤村 昭典
心不全とは
2018年のデータでは、日本人の17%の方は心疾患で亡くなっており、日本人は心臓で亡くなる方が最も多いことがわかっています。心臓の様々な疾患は、最終的に心不全になってしまうことから、心不全の治療をすることが重要となっています。
では、心不全とはどんな病気でしょうか。心不全とは、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と言われています。心不全になる原因は多種多様であり、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が原因で心不全になることもあれば、特に原因が無いにも関わらず、心臓の働きが悪くなってしまう方も多くみえます。
診断と治療
心不全の原因によって治療法も変わるため、原因をしっかりと診断することが、その後の治療にとって非常に重要となります。
一宮市立市民病院では、CT・MRI・シンチグラムといった様々な検査機器の他、心臓カテーテル検査や心筋生検などを積極的に行い、心臓の状態、心不全の原因をしっかりと診断する診療体制を敷いています。そして、確実な診断の後に、個人個人に合わせた最適な治療を行っています。
心臓リハビリテーション
「リハビリ」というと、運動をして体力を回復するイメージがあると思います。しかし、心不全における「心臓リハビリ」は、運動だけでなく、栄養や生活習慣、精神的なサポートを包括的に行うことを指しています。
運動に関して、中には「心臓が悪いのに運動をしていいのか?」と思われる方もいるかもしれません。もちろん、無理な運動は心臓にとって負担となり、病状を悪化させます。しかし、運動をせずに全身の筋力が衰えると、心不全も悪化することがわかっています。適切な体力を維持することは心不全の治療にとって非常に重要です。このため、当院では医師・理学療法士監視のもとで、心不全の方に対して体力測定(心配運動負荷試験)を行い、個人個人でどの程度の運動が適しているのかを確認しながら運動のメニューを提示しています。
食事に関しては、太り過ぎも痩せすぎも良くなく、適切なカロリーを摂ることが重要です。それに加えて、塩分の摂りすぎは心臓の負担となるため、1日6g程度の塩分に抑えることが重要とされています。しかし、自分にとってどの程度のカロリーが適切なのか、1日6gの塩分の食事とはどんな食事なのかは、普通ではなかなかわかりません。そのため、当院では専門の管理栄養士が、それぞれの患者さんにとって最も適切な食事の採り方を個別にアドバイスしながら、心不全の治療を行っています。
心臓が悪くなると、将来の自分の病状に関して、不安を感じる方も多く見えます。そんな場合には、臨床心理士がカウンセリングなどを通しての精神的なサポートを行っています。