閉塞性肥大型心筋症の治療(経皮的中隔心筋焼灼術)
循環器内科医長 杉浦 剛志
閉塞性肥大型心筋症とは
心臓の筋肉が病的に肥大してしまう肥大型心筋症のうち、心臓の出口をふさいでしまい体に血液を送ることを邪魔してしまうものを閉塞性肥大型心筋症と呼びます。肥大型心筋症の原因は遺伝性の原因が判明しているものもありますが、原因不明のものもあります。不整脈の合併も多く、致命的な不整脈の発生により突然死を起こすこともあります。
症状としては胸の痛みや、動いた際の息切れ症状、動機などを感じますが加齢とともに進行した場合、体力の低下などを年齢の問題と思い病気の症状と感じていないこともあります。
治療
- 薬物治療
治療の基本は薬物治療となります。ただし現在のところ病気を根本的に治療できる薬剤などはありません。病気の進行を遅らせることや症状の改善を目的とした薬物治療が中心となりますが、閉塞性肥大型心筋症で通常の薬物治療で症状が改善しない場合は他の治療方法を考えます。 - ペースメーカー手術
ペースメーカーによる電気刺激で心臓を収縮させることで、心臓の出口をふさぐタイミングを遅らせ血液が出ていきやすくする方法です。しかし、効果がない場合もあり通常は手術の前に効果判定をしてから適応を考えます。 - 外科的中隔心筋切除術
外科的に肥大心筋の切除をする手術です。心停止および体外循環が必要であり侵襲度の大きい手術となります。以前には高齢者以外は第一選択肢となっていましたが、現在では若年から青壮年の患者さんが対象となります。 - 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)
閉塞性肥大型心筋症に対するカテーテル手術です。他の治療効果が十分ではない場合、肥大した心筋による症状の改善のため外科的治療の代わりに行われます。外科的治療と同様の治療効果が得られ、体への負担も小さいため治療の選択をされることが増えています。
肥大心筋の栄養血管に無水エタノール(いわゆるアルコール)を注入して標的とする心筋を焼灼します。焼灼された領域の心筋は壊死するため、収縮しなくなり、長期的には小さくなるため心臓から血液が出やすくなります。 院内死亡率1~2%、追加PTSMAが必要となる可能性が5~15%、ペースメーカー移植が必要となる可能性が10~30%となりますが5~10年の生存率は80~95%と外科的治療と比較しても成績は悪くなく侵襲は低いため、近年は65歳未満の中高年者でも治療選択肢として検討されています。
一宮市立市民病院で治療を行った症例
肥大心筋を栄養する中隔枝(→)
治療前の肥大中隔
治療後の中隔