多発性嚢胞腎:早く気づけば治療選択できる
診療局長兼腎臓内科部長 新田 華代
一宮市立市民病院腎臓内科ではさまざまな疾患の診療を行っています。代表的な遺伝性腎疾患である多発嚢胞腎について新田華代医師に話を聞きました。
Q1. 多発嚢胞腎とはどんな病気ですか。
4000人に1人の有病率を認める、最も多い遺伝性腎疾患で、70歳までに約半数が末期腎不全になる病気です。両腎の正常組織が嚢胞に置き換わり、腎機能が低下しますが、それ以外に、肝臓に嚢胞ができたり、脳動脈瘤や心臓弁膜症を合併しやすいことも知られています。
Q2. どのような検査をすると診断できるのですか。
家族に血液透析を行なっている方がいる、脳出血で倒れた方がいる、という場合にはこの病気が家族性に発症している可能性を疑います。しかし、孤発性と言って明らかな家族歴がない方にも発症します。その場合には、人間ドックや健診での腹部超音波検査が診断の一助になります。腹部超音波検査で両腎にそれぞれ5個以上の嚢胞が確認された場合に診断されますが、それ以下であっても、可能性はあるため、一度腎臓内科外来を受診されることをお勧めします。
Q3. どのような治療選択ができるのですか。
疾患に特異的な治療と慢性腎臓病全般に共通する治療があります。疾患特異的治療は、2014年に保険で認められたトルバプタン療法があります。トルバプタン投与により、腎容積増大の抑制や蛋白尿の減少、そして腎機能低下速度の抑制が証明されています。ただし、トルバプタンは「利尿剤」であるため、治療に伴い大量の尿排出があり、脱水予防のため一日6〜8L程度の水分摂取を行う必要があります。トルバプタン処方には、一定の要件を満たす必要がありますが、まずはご腎臓内科医にご相談ください。慢性腎臓病としては、血圧管理、塩分制限がこの疾患では特に重要です。トルバプタン治療を選択しない場合、または要件を満たさず治療開始できない場合にも慢性腎臓病としての管理が重要です。
Q4. 普段の生活で何に気をつければいいですか。
飲水を多くすることで嚢胞増大に関与するホルモンの分泌を抑えることができると言われています。できるだけ薄い尿を出すことが重要です。