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ドクターインタビュー

婦人科におけるロボット支援手術

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産婦人科医長 林 萌

ロボット支援手術(以下ロボット手術)とは、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用い、腹腔鏡下手術と同じように患者さんの体に小さな穴を開けて行う低侵襲手術(傷口が小さい体への負担が少ない手術)です。従来の腹腔鏡下手術の特徴を生かしながら、人の手による手術の問題点をロボットの機能で克服できることが大きなメリットです。全国的にも急速に普及しており、また適応疾患も科を超えて広がってきています。一宮市立市民病院では201810月に尾張西部医療圏で初めて導入し、2019年からは産婦人科でも手術を開始しました。多くの執刀経験を持つ林萌医師に話を聞きました。

Q1. ロボット手術の具体的な特徴を教えてください。

まず低侵襲性という点が挙げられます。患者さんによっては臍の創が3cm程度になることもありますが、通常1cm程度の創45カ所で手術を施行しています。そのため痛みが比較的少なく、術後の回復や社会復帰が早くなります。開腹手術に比べると出血量が少なく、術後34日で退院可能です。

従来の腹腔鏡手術は2Dモニターでしたが、ロボット手術では高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムを用いています。術野を10倍に拡大して見ることができるため、骨盤の奥深くや細部まできれいに見ることができ、手技も正確に行えます。

ロボット手術では医師の手の代わりになる鉗子を駆使して手術を行います。ダヴィンチの鉗子は人間の手より大きな可動域と手振れ補正機能を有していて、人の指先以上に精緻な操作が可能です。

Q2. どのような疾患が対象になりますか?

子宮筋腫や腺筋症、内膜ポリープといった良性の子宮腫瘍に対する子宮全摘術と、子宮脱を中心とした骨盤臓器脱に対する仙骨腟固定術が対象になります。現時点で癌などの悪性疾患は施行していません。臍を超えるような大きな子宮であってもロボット手術が可能なことが多いので、外来担当医師にお尋ねください。

Q3. ロボット手術が継続できないときはありますか?

ロボットに不具合が生じ継続できないときがごく稀にあり、通常の腹腔鏡手術に移行することがあります。また、腹腔内に高度な癒着があり剥離が難しい場合、腹腔内の臓器を損傷してしまい腹腔鏡下で修復が難しい場合、大量出血してしまい止血が困難な場合は開腹手術に移行することがあります。

Q4. ロボットによる手術は怖い感じがします。

ロボット手術は認定資格を取得し、トレーニングを積んだ医師によって行われます。またロボットはあくまで医師のサポートの役割で、ロボット自身が勝手に動作することはありません。

Q5. 大きな子宮を小さな創からどうやって回収するのですか?

患者さんの子宮の大きさや性状、また腟の広さによって、腟から回収する場合と、臍の創を3cm程度に拡大しそこから回収する場合があります。それぞれの部位から小さく細切して回収します。

Q6. 仙骨腟固定術とはどのような手術ですか?また他の手術はありますか?

子宮を部分的もしくは全て摘出し、残った子宮や腟の断端に対して医療用のメッシュを縫い付け、腹腔内からメッシュごと持ち上げて仙骨(背骨の一種)の前面にある靭帯に縫い付けて固定する手術です。当院では20219月から導入していて、手術数は着実に増加しています。

他には腟式子宮全摘術+腟壁形成術(腟から子宮を摘出し、余った腟壁を縫い縮める)と腟閉鎖術(腟を縫って閉鎖する)があります。仙骨腟固定術が最も再発率が低いと言われているため基本的にはこの手術をお勧めしていますが、メッシュ使用が望ましくない方(重度の糖尿病がある方など)や仙骨の前の血管の走行や仙骨の状態が良くない方、80歳以上の方は腟式手術を勧めています。また全身麻酔のリスクが高い方は腟閉鎖術をお勧めします。

 

患者さんの希望と状態に沿った治療を心がけています。わからないこと、聞きたいことがあれば、いつでもご質問ください。

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