それって、ただの口内炎ですか?

歯科口腔外科部長 渡邉 裕之
体調が悪くなったりすると、よく経験するのが口内炎。多くは自然に治りますが、中には放置しておいてはいけない口内炎も存在します。長く口腔外科診療にあたっている渡邉裕之医師に話を聞きました。
Q1. 口内炎だと自己判断することはよくないことですか?
体調の悪化などによってできるアフタ口内炎は大抵1~2週間程度で改善します。2週間たっても治らない、もしくは同じところに何度もできる口内炎はがんやがんになる前の状態である可能性があり要注意です。また、時には痛みを伴わないできものが、がんであることもあります。2週間以上たっても治らない・悪化する・大きくなるといったものは医師もしくは歯科医師に一度診てもらうことをお勧めします。
Q2. 口腔内のできものにはどのようなものがありますか?
口腔内は、様々な組織が混在する場所のため良性から悪性までいろいろな種類の病変が現れます。悪性の代表は扁平上皮がんです。進行が速い場合が多いため注意が必要です。また、潜在的悪性疾患といわれる扁平苔癬や白板症などの患者さんも比較的多く受診されます。これらの病変は、ほうっておくと知らないうちにがんに変化してしまうことがあるので要注意です。がん化のリスクの高いものから低いものまで様々な段階があります。口腔は直接目で観て触ることのできる場所ですので、その診断には経験に基づいた視診・触診といった基本的な診察が大切になってきます。悪性リンパ腫という血液のがんができることもあり、血液内科の協力を得ることもあります。
Q3. 口腔がんの治療について教えてください。
他のがんと同様に、手術療法・放射線治療・抗がん剤治療の三つの方法があります。それぞれ日進月歩ですが、口腔がんは手術療法を中心に、場合によってそれらを組み合わせて治療を行います。口腔扁平上皮がんは比較的早く進行することが多いので、放置して進行すると食べたり話したりすることに影響し日常生活の質を大きく落とします。そのため当科ではがんの早期手術を提供できるよう体制を整えています。麻酔や集中治療の進歩により、80代・90代の高齢者であっても手術を行うことが多くなってきています。
Q4. どのようなことを心がけて診療にあたっていますか?
高齢化社会の進展とともに、口腔がんに罹患する患者さんの数も増加傾向です。患者さんの状態や社会的背景を加味してよりよい選択枝を検討しています。患者さんの不安を軽減できるよう、ご本人やご家族に寄りそったわかりやすい説明と、専門看護師の早期からの心のケアをおこなっています。また、口腔がん健診を行っている地域の歯科医師会とも密に連携を取り、早期に発見して治療につなげることにより健康的に生活してもらうことを目標にしています。




