大動脈瘤の治療:高齢者でも手術は可能?
血管外科医長 森前 博文
大動脈瘤は破裂してしまうとほとんどの方が亡くなってしまう怖い病気です。一宮市立市民病院の血管外科ではステントグラフト治療を主としてその診療に当たっています。森前博文医師に話を聞きました。
Q1. 大動脈瘤の原因は何ですか?
動脈瘤は70~80歳代に発症が多く、生じた原因により動脈硬化性・炎症性・感染性・先天性・外傷性などに分けられます。その中で動脈硬化性のものが一番多く、血管が高血圧・脂質異常症(高コレステロール)・喫煙などにより、傷付いて脆くなり、その部位が血圧で押されることにより、瘤化していくと考えられています。
Q2. 大動脈瘤の何が怖いのですか?
大動脈瘤は大きくなると、破裂しやすくなり、破裂するとほとんどが助からない重大な病気です。しかし、ほとんどの患者さんには破裂するまで自覚症状がありません。健診や人間ドック、他の疾患に対して行った超音波検査やCT検査などで偶然見つかることが多い病気です。やせている方の場合には、腹部に心臓のような拍動を感じ、腹部大動脈瘤に気付くこともあります。
Q3. 大動脈瘤はいつ、どのように治療するのですか?
今の医療ではまだ大動脈瘤は薬では治せません。外科的な手術が必要になります。手術の方法としては、開胸や開腹をして行う人工血管置換術が基本です。最近では、手術侵襲の低い血管内治療(ステントグラフト内挿術)ができるようになり、解剖学的条件などが合えば人工血管置換術が困難な患者さん・高齢の患者さんでも施行でき、適応は広がっています。
大動脈瘤で大事なことは、どこの部位に瘤があるかと言うことです。部位により治療方法・手術の難易度・予後が変わってくるからです。大きく胸部大動脈瘤・腹部大動脈瘤・胸腹部大動脈瘤に分けられます。その他に瘤の形態も重要です。動脈壁が全周性に大きくなる紡錘状瘤と一部分だけがポコッとお餅を焼いた時のように膨らむ嚢状瘤があります。紡錘状瘤の大きさが、胸部・胸腹部では5.5cm~6cm、腹部では5~5.5cmに拡大すると手術が必要と考えています。嚢状瘤は一般に不安定で小さくても破裂しやすいと言われているので早めに手術をすることもあります。また、瘤径が半年で5mm以上拡大するものも破裂の危険がありますので、早めの手術を検討します。
Q4. 大動脈瘤は何歳まで手術できますか?
先にも述べましたが、ステントグラフト内挿術という低侵襲の手術ができるようになったため、解剖学的な条件が合えば、極端な言い方をすれば100歳でもやろうと思えばできます。実際は、患者さんの全身状態や併存疾患、生活状況など全てを総合的に判断して手術の適応を決めています。各々患者さんにとって何が最善の治療(手術)方法かを常に考え、質の高い治療にこだわっています。動脈瘤の治療で悩んでおられる患者さんやそのご家族がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。