甲状腺疾患
糖尿病・内分泌内科部長 恒川 卓
甲状腺とは
- 甲状腺は首の前方で、のどぼとけのすぐ下にあり、横幅4〜5 cm程度、重さが10~20 g程度の臓器です。蝶が羽を広げたような形をしています。甲状腺は薄くてやわらかく、正常な時には外から触ってほとんどわかりませんが、腫れたりしこりができると、異常に気がつくことがあります。
甲状腺の役割
- 食べ物に含まれるヨウ素(ヨード)を材料にして甲状腺ホルモンを作り、分泌、保存するはたらきをしています。
甲状腺ホルモンのはたらき
- 新陳代謝の促進
- 脈拍や体温、自律神経などの働きを調整し、エネルギー消費を一定に保つ
- 子どもの成長や発育を促進する
甲状腺ホルモンが多すぎる時の症状
- 動悸
- 体重減少(食べているのにやせる)
- 指のふるえ
- 暑がり、汗かき
- 疲れやすい
- 軟便・下痢
- 筋力低下
- 精神的なイライラや落ち着きのなさ
- 月経不順
- 甲状腺がはれる
- 目が出る など
甲状腺ホルモンが少ない時の症状
- 無気力
- 疲労感
- むくみ
- 寒がり
- 体重増加(太る)
- 動作緩慢
- 記憶力低下
- 便秘
- 月経異常や不妊、流早産 など
甲状腺の病気
- 甲状腺ホルモンが多くなる病気(バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など)
- 甲状腺ホルモンが少なくなる病気(慢性甲状腺炎・橋本病)
- 甲状腺内に腫瘍ができる病気(良性、悪性)
当院における甲状腺診療
一宮市立市民病院は日本甲状腺学会認定専門医施設であり、専門医が多数在籍し、他科と連携しながらほとんどの甲状腺疾患について診断から治療まで当院で完結することができます。
採血検査
甲状腺ホルモンの値や甲状腺の病気があるかを調べます。
甲状腺超音波検査
- 甲状腺の大きさや性状、腫瘍病変の位置・大きさ・性状を調べることで甲状腺疾患の診断に役立ちます。
- 食事制限は不要で超音波検査室で行います。所要時間は10分程度です。
甲状腺穿刺吸引細胞診
- 甲状腺に腫瘍が見つかった場合には超音波検査で甲状腺の内部を確認しながら、腫瘍に針を刺して細胞を採取し顕微鏡で細胞の良悪性を判定します。
- 火曜日と水曜日の午後に超音波検査室で行います。所要時間は20分程度です。
バセドウ病のアイソトープ治療(131I内用療法)
- バセドウ病において、抗甲状腺薬が無効な場合や副作用のため使用できない場合は、放射線治療科に依頼し131I内用療法(放射性ヨード治療)も外来で施行しています。詳しくは当科外来担当医にご相談ください。
甲状腺の外科治療
- バセドウ病および甲状腺腫瘍(良性、悪性)に対しての手術療法を耳鼻咽喉科あるいは乳腺・内分泌外科に依頼して行っています。適応が合えば内視鏡下甲状腺手術も行っています。